2007年9月3日月曜日

(墓11)この血ある限り

以前、「しんぽう週末コラム」で風呂のことを書いた時に、わりと反響が良かったのは、やはり読者が日本人だからだろう。

ペルーにやって来て、ここの生活習慣にほとんど染まっても、恋しいものは、「お風呂」である。その思いは、初期移民たちと同じようだ。最初の日本人移民が入植したカニエテ郡のカサ・ブランカ村には、100年前に先駆者が住んでいた家々が残るが、共同浴場だった建物も現存する。【=写真:現在はペルー人の一家が住居として使っているので、中を見ることはできない】

また、チャンカイ町の日系人のSさん宅には、なんと現役の五右衛門風呂がある。先代(1世)が造ったという年季ものだ。この風呂に入れさせてもらった時は、嬉しくて泣きそうになった。

また、中央森林地帯には温泉があり、その昔、移民たちの憩いの場になっていたということだ。風呂にも100 年史がある。

先人の労苦は並大抵ではなかった。そこで、お風呂の助けが必要だったのだ。体を使った重労働にも、風呂。頭を使った精神労働にも、やっぱり風呂だ。失恋にも風呂。幸せ気分をふくらませるのも、風呂。そして、お正月には朝寝朝酒朝風呂、である。

日本人の血を持つかぎり、私は風呂に、愛着を持つだろう。

『ペルー新報』掲載(年月日不明)
合掌。

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